2022.01.27

基礎知識

半纏(はんてん)とは江戸庶民の防寒着のこと!特徴などを紹介

半纏(はんてん)とは江戸庶民の防寒着のこと!特徴などを紹介

江戸庶民が防寒目的で着用した上着のひとつに、半纏(はんてん)があります。どてらなどの他の類似する
上着とも比較しつつ半纏の特徴を見ていきましょう。また、名前の由来や着用シーンなども
詳しく紹介します。

半纏とは江戸時代の防寒着のこと

半纏とは江戸時代に着られるようになった上着のことです。半纏は主に庶民が着たもので、表地と裏地の
2枚の布からできています。また、間に綿を入れた半纏を「綿入れ半纏(わたいれはんてん)」と呼び、
防寒着として着用されました。
半纏の形は羽織と似ています。羽織は武士が鎧の上から着用した「陣羽織(じんばおり)」が由来と
なっている上着で、主に男性が着用しました。明治以降は女性も羽織を着るようになりましたが、
男性が羽織を着るのは正装としての意味合いがあるのに対し、女性はカジュアルな上着として着ること
が一般的です。

袖が通常の半分(半丁)であることに由来する 

半纏は、袖が通常の半分(半丁)であることから名前がついたとされています。その後、纏う(まとう)
の漢字を組み合わせ、半纏と書くようになったようです。
なお、「纏」と書いて「てん」と読む例は少なく、仏教関連の言葉で煩悩を意味するときのみと
いわれています。また、半纏を「半天」と書くこともありますが、これは特に意味はなく当て字です。

一反の半分で作れることに由来するとの説もある

半纏の由来として、一反(着物1着分の布。36~38cmほどの幅で12m以上程度)の半分で
作れるからというものがあります。通常、着物を作るのには一反必要ですが、
半纏の場合は2着作れたので、半反(はんたん)
や半反物(はんたんもの)と呼ばれ、なまって半纏となったようです。
なお、半反物は元々は丁稚奉公のための服装だったとされているので、半纏は作業着ともいえます。

火消したちが着用した「火消し半纏」

江戸時代は「火消し」と呼ばれた消防団員たちが活躍した時代でもあります。火消したちはそれぞれの
組に属し、火事と聞くとすぐさま飛んで行って消火活動にあたりました。
火消したちが消火活動に向かうときは、「火消し半纏」を羽織っていたようです。
火消し半纏の表には大きく組の名前が記され、どこの組に属しているのか、また、どのような役目を
果たすのかが一目でわかるようになっていました。

裏地にこだわる火消しも多かった

命をかけて日の中に飛び込む火消したちにとって、火消し半纏は単なる制服を超えた存在だったのかもし
れません。裏地にこだわり、お洒落かつ大胆な絵柄を選ぶ火消したちも少なくありませんでした。
また、火消したちが裏地にこだわったのは、贅沢な着物を着ることを禁じられていたためともいわれて
います。庶民たちのささやかな抵抗ともいえるでしょう。

半纏と類似する上着との違い

江戸時代に着られるようになったといわれる半纏は、現代でも着用することがあります。元々丁稚奉公や
火消し、職人などの庶民が着たことからも、気軽な防寒着であったことがわかります。
半纏と混同しがちな上着として、はっぴ(法被、半被)やちゃんちゃんこ、どてらなどが挙げられるで
しょう。それぞれどのようなときに着用するのか、また、半纏とは何が異なるのか紹介します。

法被、半被

はっぴ(法被、半被)といえば、イベントやお祭りのときに着る気軽な上着ですが、庶民が着用した半纏
とは異なり、元々は武家が家紋などを染め抜いて着た上着とされています。実際に、江戸時代には武家
より身分が低い場合ははっぴは着られなかったようです。
はっぴと半纏は、由来以外にもいくつか違いがあります。例えば、はっぴの着丈はお尻の真ん中よりも
長いことが一般的ですが、半纏はお尻の上くらいであることが多いです。袖もはっぴは長めですが、
半纏ははっぴよりは短いことが多いでしょう。
なお、はっぴを「半被」と書くことがありますが、これは法被と半纏をかけ合わせて作った当て字と
いわれています。由来や細部には違いがあるものの、どちらも簡単に羽織れる上着であることや気軽に
着用できる点などは共通しているので、昔から似たようなイメージがあったのかもしれません。

ちゃんちゃんこ

ちゃんちゃんことは、綿入りの袖がない防寒着です。綿入れ半纏の袖がないものといえばイメージがわき
やすいでしょう。
ちゃんちゃんこも、半纏と同じく襟は折り返さないで仕立てられています。袖がないので簡単に着られ、
ちょっと寒いときなどにも便利です。
地方によっては、「さるこ」や「でんち」と呼ばれています。さるこは、猿回しの猿が着ている上着
に似ていることから名前がついたようです。子どもが着るものとされていますが、女性も着ることが
あります。なまって「さるっこ」と呼ばれることもあるようです。
一方、でんちは、東海地域より西日本で使われることがあります。殿中羽織(でんちゅうばおり)が
なまって、でんちと呼ぶようになったようです。また、同じく殿中羽織がなまって、「てんこ」や
「はんこ」と呼ぶ地域もあります。
東北地域では「つんぬぎ」と呼ばれることもあるようです。これは筒(そで)が脱げてしまったという
言葉に由来しています。

どてら

どてらは和装の上に着る防寒着で、くるぶしまである長めの丈であるところが半纏とは異なります。
どてらは羽織りやすいように通常の着物よりも大きめに作られ、綿が入っていることが特徴です。
お風呂上りやちょっと出掛けるときなどに着用されてきました。
なお、どてらとは関東地域の呼び名で、関西地域では丹前(たんぜん)と呼ぶことが一般的です。

まとめ

江戸時代から庶民に愛されてきた半纏は、現在でも防寒着として着用することがあります。綿入り半纏は
さらに暖かいので、家の中で着用すればエアコン代の節約にもなるでしょう。
半纏と法被を混同するケースも多いですが、由来も形状も異なります。法被は元々は武士などが
着ましたが、現代ではお祭りやイベントのときに着用されることが多いです。一方、半纏はイベントとい
うよりは普段着、防寒着の要素が強いといえます。昔ながらの半纏を着て、冬を暖かく乗り切りましょう。