2022.02.10
基礎知識
法被と半纏の違いは?混同されるようになった経緯や特徴・種類を解説
法被と半纏の違いを説明するのは簡単ではありません。現代では、同義語として使われるのが一般的です。
もともと明確な違いがありましたが、時とともに混同されるようになった経緯があります。
本記事では法被と半纏の違い、それぞれの特徴や種類を解説しましょう。
法被(はっぴ)はもともとは武士の羽織り物
法被(はっぴ)とは「はふひ(法被)」もしくは「はんぴ(半臂)」が音変化した言葉です。
法被というと、お祭りやイベント、キャンペーンなどで羽織っているカラフルな和服の上着をイメージする
人が多いのではないでしょうか。
しかし、法被として認識されているこの和服は、実は半纏(はんてん)の一種で、
「印半纏(しるしばんてん)」と呼ばれるものです。現在では法被と半纏は同義語として扱われることが
多く、誤用とはいえません。
法被はもともとは江戸時代に武家が着用していたものです。ここでは、法被の歴史と特徴を
説明しましょう。
法被(はっぴ)の歴史と特徴
法被は、江戸時代に武士の羽織物として広まった和服の上着の一種です。背中に大きめの家紋が染め
抜かれていること、襟を返して着ること、胸元に紐がついた単衣であることが法被の大きな特徴になって
いました。着丈はやや長めで、腰から膝くらいまでです。
法被は武家で広まったのちに、町火消しや職人の間で作業衣として広まった経緯があります。
襟から胸元にかけて、自分の名前や所属している組織名を入れることが多く、ユニフォーム的な
ニュアンスのある衣服といえるでしょう。
半纏(はんてん)はもともとは庶民の防寒具
江戸時代に広まった半纏(はんてん)は、「半天」とも書く和服の上着で、防寒着としての機能を
持っています。羽織と似た形の衣服ですが、羽織との違いは脇(わき)間の襠(まち)がないこと、
前下がりがないことなどです。
ここでは、半纏の歴史と特徴を詳しく解説します。
半纏(はんてん)の歴史と特徴
半纏が庶民の間で広まったのは、天保の改革(1841年~1843年)で羽織が禁止されたことがきっかけに
なりました。羽織の替わりとして、形が似ている半纏が着用されるようになった経緯があります。
半纏は用途によって、さまざまな形・素材の上着として発展してきました。江戸時代に着用された
半纏は主に次の5つに分けられます。
赤ちゃんを抱っこして上から羽織る「ねんねこ半纏」、大工や植木屋などの職人が着る「印半纏」、
とび職が防寒用として着用した「長半纏」、とび頭が着用した「革半纏」、旅をする商人が着た
「蝙蝠(こうもり)半纏」などです。
半纏は江戸時代の庶民の生活に密着した衣服といえるでしょう。現在、法被もしくは半纏と
呼ばれているのは、印半纏です。
法被と半纏の違いとは?
現代では法被と半纏は、ほぼ同義語として認識されています。法被や半纏を扱っているメーカーでも、
2つの名前が並記されているケースが多く、同じものとして扱われるのが一般的です。
しかし、もともと法被と半纏には明確な違いがあります。ここではその違いを解説しましょう。
そもそもの形が違う
法被と半纏は、そもそもの形が違います。法被の着丈は腰から臀部あたりまでになっており、
やや長めで袖は長く広めになっています。
一方、半纏の着丈は臀部のやや上あたりまでで、法被よりも短めです。袖も短く法被よりも
小さな作りになっており、胸元に紐がついています。
もともと法被は武家の衣服の上着、半纏は庶民の防寒着として広まった経緯があり、違う種類の衣服でした。
法被と半纏とが混同されるようになった歴史的背景
法被と半纏が混同されるきっかけとなったのは、前述した天保の改革による羽織禁止令です。
法被や羽織は襟を返してあるのが特徴であるため、襟を返さずに着ることによって禁止事項を回避し、
結果として法被をアレンジした半纏が広まりました。
特に襟や背中に屋号や家紋を染めて入れた印半纏は、家紋を入れた法被と特徴が共通していることから、
混同されるようになった経緯があります。
現在流通している法被・半纏の種類
現在流通している法被と半纏には、いくつかの種類があります。主な種類は「短法被・短半纏」
「長法被・長半纏」「袖なし法被・袖なし半纏」の3つです。ここでは現在の流通状況に合わせて、法被と
半纏を同じものとして説明します。
それぞれの特徴と用途、さらにはどんな人が好んで着用しているかを解説しましょう。
一般的に着用されている短法被・短半纏
法被・半纏で一般的に着用されているのは短法被・短半纏です。お祭りやイベント、販売キャンペーン
などで着用されるのも、短法被・短半纏がほとんどといっていいでしょう。着丈も袖も短めで動きやすい
ため、祭りで激しい動きをする場合にも適しています。
法被・半纏のメーカーが取り扱っている種類も豊富です。色・デザイン・素材もさまざまなバリエーション
があります。
年配者に好まれる長法被・長半纏
長法被・長半纏は膝丈、もしくは膝下まである長めの法被・半纏です。大工の棟梁が着用していること
もあり、組織内の上位の人間が着用するというイメージがあります。お祭りを束ねる年長者に好まれる
傾向があるようです。
パフォーマンスをした場合に裾の動きがダイナミックに見えることもあって、応援団員が着用するケースも
少なくありません。よさこい祭り、演舞などでも使用されます。
太鼓や踊りに適した袖なし法被・袖なし半纏
袖なし法被・袖なし半纏はその名前のとおり、袖のない法被・半纏です。わずかに飾りのような袖が
付いているものもあります。帯で固定せず、羽織るだけになっているものが多いのも特徴といえるで
しょう。
帯と袖がないことによって、腕を大きく動かす動きや全身を使った激しい運動にも対応できます。
躍動感を表現する演出との相性も良く、和太鼓や踊りに適した法被・半纏です。
まとめ
法被は武家が着用する上着、半纏は庶民が着用する防寒着であり、もともとはまったく違うものでした。
しかし、江戸時代の後期からほぼ同じものという認識が広まった歴史的な経緯があります。
現在では、法被と半纏は同じものとして流通しているのが実状です。お祭りの衣装、イベント、
販促キャンペーンなどで幅広く着用されており、多様な種類のものが登場しています。
行事がある時に着用することで、生活に彩りを添えることも期待できるでしょう。
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