2022.03.01

基礎知識

消防団の法被の着方!江戸時代の着方の作法についても詳しく解説

消防団の法被の着方!江戸時代の着方の作法についても詳しく解説

消防団法被の着方は、帯を締めずに羽織るのが一般的です。よりおしゃれに着こなすために知っておきたい
アイテムについても解説するので、ぜひ参考にしてください。また、江戸時代にはどのように着られて
いたのかについてもご紹介します。

消防団法被(火消し半纏)の着方は羽織るだけ

 

消防団にもよりますが、消防団法被(火消し半纏:ひけしばんてん)の着方は帯を締めずに、シンプルに
羽織るだけのことが多いです。消防団法被は腰の部分に「腰柄(こしがら)」と呼ばれるデザインが
入ることがありますが、帯をせずにシンプルに羽織ることで腰柄がしっかりと目立ち、より粋でいなせな
雰囲気に仕上がります。

腹掛けを合わせることも多い

消防団法被は、インナーとして「腹掛け(はらがけ)」を合わせることがあります。
腹掛けとは火消しや大工、商人などが着用していた作業着です。そのままでも良いのですが、鯉口シャツ
などを着た上に腹掛けを合わせ、さらにその上に消防団法被を羽織って仕上げましょう。
なお、腹掛けのサイズ感はちょっときついくらいがちょうど良いといわれています。首元から鯉口シャツが
見えない程度にしっかりと腹掛けの紐を締め、だらしない印象にならないように注意しましょう。

前下がりがない法被は帯を締めない

消防団法被の着方は、シンプルに羽織る方法と帯で締める方法の2つがあります。ただし、どちらでも
良いのではなく、法被によって適した着方が異なるので注意が必要です。
どちらの着方か迷ったときは、法被を床やテーブルに置いてみましょう。後身ごろよりも前身ごろのほうが
少し長く、前身ごろの裾が脇側から襟側に向かって徐々に長くなっている場合は、
帯を締めて着こなします。このような形の法被を「前下がり(まえさがり)」と呼び、帯を締めることで
裾が平行になります。

帯をするときは右前に着る

帯をするときは、襟を右前に合わせて着ます。右前に合わせるとは、右身ごろを身体に合わせ、その上から
左身ごろを重ねることです。
ちなみに、右前の「前」とは時間的に前であることを指します。つまり、右身ごろを時間的に前に
身体に合わせ、左身ごろを時間的に後に重ねるので、右前と呼ぶのです。性別や年齢に関係なく、
法被や着物を着るときは、右前に合わせましょう。

江戸時代の消防団法被の着方

江戸時代、消防団法被は、火消したちが火消しの作業をするときに着用していました。
大きく組の名前を染め抜いて所属先を示すだけでなく、丈夫な厚手の綿生地で、火消したちの身体を守る
役割もあったのです。

実際に火事が起こったときは、火消したちは次の手順で消防団法被を着用しました。

1.法被を羽織る
2.勢いよく水を被る
3.消火活動にあたる

火消したちがどのような着方をしたのか、詳しく解説します

1.法被を羽織る

まずは法被を羽織ります。火事が起こったときに羽織るので、きっちりと帯をする時間がないかも
しれません。しかし、適当に着てしまうと消火活動のときに脱げてしまうと困るので、しっかりと襟中心を
合わせて粋に着ましょう。
なお、消防団法被は通常の法被よりも長めのことが多いです。お祭りやイベントなどで着る法被は
80cm~95cmの着丈が一般的とされていますが、消防団法被は110cm~120cmの長いものを
選ぶことがあります。
また、法被を選ぶときは、サイズ感も大切です。消防団法被は火消しにとって正装なので、
だらしなく見えないように身体にぴったりと合ったものを着ます。

2.勢いよく水を被る

そもそも法被は通常の着物よりも厚手の綿生地で、少々の火の粉では燃えにくいように作られています。
とはいえ現在のように防火生地ではないので、長時間火の中にいると燃えてしまうこともあるでしょう。
そこで、火消したちは法被の上から勢いよく水を被り、火の中に飛び込んでいきました。水を被ることで
法被の生地に水が含まれ、乾いた布よりは燃えにくくなります。
また、消防団法被の生地は刺子(さしこ)と呼ばれる吸水性の高いものなので、通常の着物よりも大量の
水を含むことができ、すぐには燃えません。
なお、刺子にはさまざまな種類があります。刺子の中でも特に厚手の「二重刺子」は消防団法被に
使われることが多い生地です。黒と白の糸を交互に織ることで厚みを出し、吸水性を高めています。
見た目は二重刺子と変わらないけれども少し薄手で柔らかい「一重刺子」や、さらに薄い「一本刺子」
などもありますが、いずれも通常の生地よりは厚手で丈夫です。防寒効果もあるので、寒い時期の
お祭りの際には、法被の上から刺子で作った法被を重ね着することもあります。

3.消火活動にあたる

消防団法被の上から勢いよく水を被り、法被にしっかりと水を含ませてから消火活動にあたります。
ところで、江戸時代の火消したちは、主に建物を破壊することによって延焼を防ぐことが仕事でした。
大名や旗本たちが暮らす場所で活躍した「大名火消」と「定火消」、そして町人が暮らす地域の消火活動に
あたった「町火消」の3つに分かれ、それぞれの地域を守ったようです。
町火消は、さらに地域によって細かく分かれ、享保の時代には「いろは47組(後に48組)」と
「本所深川16組」が組織されました。総勢1万人ほどいたようで、消防団法被1枚で江戸の町を守る勇気ある
行動に憧れる人も多かったようです。

江戸の粋!消防団法被を着こなそう

消防団法被は、消防団の正装でもあり、命をかけて働く際に身を守る道具でもあります。そのため、腰柄や
紋などを入れて、よりおしゃれに、より粋に仕上げることも少なくありません。
また、厚手で火の粉がつきにくいので、実用的なところも消防団法被の魅力です。防寒着にも使われる刺子
でつくることが一般的なため、冬のお祭りのときなどにも着用できるでしょう。
消防団法被は江戸の粋の象徴ともいえます。粋に着こなすためにも、着方に注意を払うことが大切です。
前下がりがあるかどうかをチェックして、あるときはしっかりと帯を締め、ないときはさらっと格好よく
羽織りましょう。襟中心がしっかりと首の後ろに来るように意識すると、
よりすっきりと見えておしゃれです。