2020.12.22
基礎知識
はっぴと半纏はどう違う?混同される理由や用途を解説
伝統的なお祭りをはじめ、各種イベントで見かける「はっぴ」。はっぴ姿の人がいるとなんといっても
お祭り気分が出ますし、着ている本人の気持ちも高揚し、みんなで盛り上げようという
一体感が生まれるでしょう。
しかし、考えてみると、この「はっぴ」という呼び方のほかに「半纏(はんてん)」という名称も
ありますよね。
はっぴと半纏、どう違うのでしょうか?
今回は「はっぴ」と「半纏」の違いやその由来、はっぴの種類などについてご紹介します。
1.現代のはっぴは「印半纏(しるしばんてん)」にあたる
一般的に「はっぴ」と聞いてイメージされるのは、お祭りやイベントで着用される、比較的鮮やかな
色合いで、目立つ模様が染め抜かれている羽織りものではないでしょうか。
実は、今日「はっぴ」として認識されている衣類は、半纏の一種である「印半纏(しるしばんてん)」
にあたり、半纏をはっぴの形に似せたため厳密にははっぴではありません。
ただ、現在でははっぴも半纏もほぼ同義語のように使われているのが実状ですので、あえて
印半纏と呼ぶ必要ありません。
2.はっぴと半纏の違いは「羽織」と「防寒着」
今日ではほぼ同一のものとして扱われているはっぴと半纏。どういった事情で区別されなくなって
しまったのでしょうか。同義語のようになった理由と両者の違いについて見ていきましょう。
はっぴと半纏が同義語として使われるようになった背景
江戸時代、武士の羽織ものとして背中に家紋を染め抜いたはっぴが流行りました。その流行を受けて
庶民の間にもはっぴが広まっていきましたが、武士と庶民が同じ衣類を着るのは問題があるとされ、
幕府の「羽織禁止令」により庶民の着用が禁じられてしまいます。
そこで、庶民は武士の着ているはっぴから胸紐をなくし、半纏風にアレンジした「印半纏」が生まれて
大流行します。
こうすることで、見栄えははっぴとほとんど変わらない半纏が生まれ、はっぴとの区別があいまいに
なっていきました。
はっぴと半纏の厳密な違い
はっぴも半纏も江戸時代に生まれた「羽織もの」の一種ですが、はっぴが武士の「羽織」を起源として
いる一方、半纏は庶民の防寒着として生まれました。
はっぴは「羽織」なので、裏地がない単衣(ひとえ)で作られており、背中には家紋が染め抜いて
あります。袖や裾にゆとりがあり、前に胸ヒモがなく、着物の上からでもひらりと羽織りやすい形で、
襟を折り返して着るのが特徴です。
一方、半纏は庶民の「防寒着」ですので、保温性が重視され、裏地付きの袷(あわせ)で作られています。
より防寒性を重視し、2枚の生地の間に綿を入れた「綿入れ半纏」もあります。
動きやすさも重視され、胸元に留めヒモがついており、袖丈がはっぴの半分程度で全体的に小さく、
裾も短めです。
※綿入り袢纏
3.現代で使われているはっぴ(半纏)の種類と用途
元来は別々の衣類であったはっぴと半纏ですが、今では同義語として扱われています。
そんな現代のはっぴ(半纏)の種類と用途を見ていきましょう。
短はっぴ・短半纏
短はっぴは裾がおしりの辺りに来る短めのはっぴです。最も一般的なはっぴで、生地やデザイン、
価格帯も豊富に揃っています。動きやすく軽快感もあるため、お祭りのほか店頭イベントなどでも
大活躍のアイテムです。
長はっぴ・長半纏
長はっぴは膝丈あるいは膝下丈と長めの着丈のはっぴです。大工の棟梁も着ていたことから、
ある種の威厳を感じさせ、お祭りを取り仕切る年配者や応援団員などに好まれるタイプです。
また、裾がダイナミックに揺れるため、よさこい踊りや各種演舞の衣装としてもよく用いられます。
袖なしはっぴ・袖なし半纏
袖なしはっぴは袖がないかごく短い飾り袖のみのはっぴです。肩や腕の動きが妨げられないので、
太鼓や踊りの衣装に向いています。
また、帯で固定せず羽織るだけで着用することが多く、動きに合わせて裾が舞い、華やかな印象や
躍動感を感じさせます。
4.お祭りのはっぴ(半纏)にはルールがある
伝統的なお祭りは、その地域に古くから根差す文化があります。そのため、お祭りで着用される
はっぴ(半纏)には地域ごとの文化や習わしがあり、町内会指定のはっぴ以外はNGなど明確な決まりが
存在する地域も見られます。
例えば、江戸の名残がある東京では長めの半纏が好まれ、浜松のお祭りでははっぴの下に内半纏を
着用します。
初めてのお祭りにはっぴを着て参加したい場合は、地元住民や商店街の関係者などにその地域の文化や
ルールについて話を聞いた上で用意すると安心でしょう。
5.まとめ
今ではほぼ同義語となっている「はっぴ」と「半纏」ですが、その由来は異なります。
はっぴは武士の羽織ものが始まりだった一方、半纏は庶民の防寒着として生まれました。
そんな両者が混同されるようになった背景には、現在のはっぴのもとである「印半纏」がもともとはっぴ
から派生しているという点があります。
今日見られるはっぴは、短はっぴ、長はっぴ、袖なしはっぴの3種類。地域ごとに好まれるタイプや
伝統的な決まりごとがありますので、お祭りにはっぴ姿で参加するときにはあらかじめ地元の人から
情報を得ておきましょう。
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